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歌田明弘の「地球村の事件簿」maglog版
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歌田明弘
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 1982年から92年まで、『現代思想』編集部を経て『ユリイカ』編集長。その後は、フリーで編集をしたり、大学の非常勤講師をしたりしながら、だいたい原稿を書いています。
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テレビドラマがおもしろくなるのはこれから?

テレビ

公開日:2009/10/11 19:37
最終更新日:2009/10/11 19:42

テレビは、ネット動画にも視聴者をとられ、いよいよ苦しくなってきた。
なかでも民放のドラマ視聴率の低さは著しい。
苦境に陥っている民放のテレビドラマ戦術は?

●民放のドラマ視聴率が低い理由

 テレビ・ドラマは、ほんとに見られていないらしい。
 毎週、新聞などでは視聴率ランキングが発表されるが、ドラマはほとんど入っていない。NHKの大河ドラマがベスト3内を維持し続けているのを除けば、ドラマが入っていることはまれだ。若年層を中心に、ネット動画を見ている人が多くなり、テレビ視聴が減っていることも原因だろう。

 ただ、ではテレビの影響力がなくなったのかといえば、そんなことはない。
 視聴率1パーセントで100万人(と言われているが、これは正確ではない。世帯視聴率なので人間の数には還元できないし、そもそもテレビの前にいるのは犬やネコかもしれないが、とりあえず大ざっぱに言って)というような当てにならない数字はともかく、ネットでも、テレビの話題で盛り上がっていることは多い。酒井法子の話だって、一種のテレビネタだろう。
 ランキングに出てこないテレビドラマのことを書いても、そこそこの人がじつは見ていて、ネットでもそれなりの反応があったりする。「ネットの時代になるとテレビは見られなくなる」のは確かだが、テレビが「怪物メディア」であることには変わりない。

 それはさておき、私のうちは、視聴率対象世帯ではないが、もし入っていたとしても、民放のドラマ視聴世帯にはカウントされない。なぜなら録画で見ているからだ。視聴率はリアルタイムで見ている場合にしかカウントされない。
 だから、視聴率がカウントされないジャンルの最たるものは映画と並んでドラマだろう。録画装置を持っている人の多くは、これらは録画で見ているはずだ。なぜかは言うまでもない。CMが入って興ざめになるのがいやだからだ。ドラマの視聴率が低くなるのは当然だ。
 ビデオ・レコーダーとハードディスク・レコーダーは機能は似ているが、テレビの見方は大きく変わる。もちろんビデオがあるのとないのでもテレビの見方は変わるが、それに近いぐらい見方が変わる。こうしたことはデジタル・ビデオ・レコーダーのインパクトを小さく言いたがっていた電通のレポートも認めていた。
 容易に録画して見ることができるというのは、録画機能の有無と同じぐらいの変化をもたらす。たとえば、毎週一回放送される連続ドラマをすべて録画し終わってからまとめてみようとすると、ビデオではビデオを抜き差しするなど厄介な操作が必要になりがちだが、ハードディスク・レコーダーならばじつに簡単だ。
 録画してCMを飛ばしてテレビを見るようになってすぐ気がつくのは、NHKに比べて民放のドラマ制作者はとんでもないハンディを背負っているということだ。
 民放のドラマは、しばしば山場のもっともいいところでCMを入れなければならない。NHKはこうしたハンディを負っていない。だから、民放よりつまらないと感じるNHKのドラマはよほどひどい出来ということになる。
 こうしたことに気づくまで、民放のドラマは安っぽくてつまらないと思っていた。実際、民放は広告主が払っているお金の1割しか制作費にまわっていないという調査があったぐらいだから、お金のかけ方は違うだろう。しかし、民放のドラマがつまらなく見えるのは、CMが入って興ざめになるせいもあるはずだ。
 
●意外におもしろかった「コールセンターの恋人」

 このところ見た民放のテレビドラマでは、「コールセンターの恋人」というのが意外におもしろかった。テレビ通販、とくに注文やクレームを受けるコールセンターを舞台にしていた。
 私が見始めたのは、ドラマとして期待したからではなかった。小泉ジュニア主演のこのドラマは、力の入ったキムタクものなどに比べると、どう見ても三流ドラマの脱力した雰囲気が漂っていた。お世辞にも期待できる感じはしなかった。
 ただ、「ネットによってメディアがどう変わるのか」といったことを主要な関心のひとつにしている私は、通販の世界に興味を持っている。広告収入が減り始めたマスメディアは、通販に力を入れざるを得なくなるからだ。テレビ局も、通販を外部の会社にゆだねっぱなしにはせず、子会社などを作って乗り出している。苦境に陥ったテレビも通販を頼りにせざるをえなくなってきたわけだが、とはいえテレビ通販が前面に出れば、多くの視聴者に嫌がられる。というわけで通販は、テレビの鬼っ子のような存在だ。そのテレビ通販を舞台にするというのは、一種の「自爆ネタ」で、どうやって描くのだろうと興味があったのだ。

 こうしたことに始まって、ちょっと皮肉な視線で見ると、このドラマにはいくつも「見どころ」があった。

 このドラマが「意外におもしろかった」のは、もっぱら奇妙な持ち味の女優のミムラの存在感によるのだが、小泉ジュニア演じるエリート商社マンはコールセンターに飛ばされ、最初は腐っていた。しかし、エリートになるよりも、人間味のある職場で仕事をすることに魅力を感じ始めるなどというのも、「草食系男子」のいまの時代らしかった。
 また、「小泉ジュニアであることは、かつてならプラス材料だっただろうが、時代が変わり、父親はいまや諸悪の根源とまで見られ始めた。『戦犯の息子』ではツライだろうな」などと思ってみるのも、このドラマの楽しみ方のひとつなのかもしれない。

 このドラマは、通販会社もスポンサーになっていて、通販のCMが入っていた。全体として通販にとても批判的というわけではないので、驚くほどのことではないのかもしれない。とはいえ、名取裕子演じる「通販番組のカリスマ」がたくみな口上で、「そんなものが」と思う商品を売ってしまう‥‥などという場面は、毎回のように出てくる。だから、野心的なスポンサーの組み合わせではあるだろう。
 また、トヨタのCMではドラマ内の通販に出てくる役者がそのままCMにも出てきて、テレビ通販のようなCMをやっていた。CMまで通販なわけだ。録画して見ていたが、ドラマが続いているのかと思ってCMを見てしまい、テレビ局の「CM飛ばし対策」にみごとに何度かはまってしまった。

●クレーマーの実像?

 肝心のドラマの筋はそう意外なものではなかった。
 コールセンターにクレームをつけてくる人は、寂しくて助けを求めているなど、クレームをつける側に問題があるという展開が多かった。通販会社がスポンサーになっているばかりでなく、テレビと通販が一体化しつつある現状では、こう要約してしまうと、「おいおい、電話をかけてくる人をそう見ているのかよ」と突っこみたくなるかもしれない。
 テレビの報道番組を舞台にした内幕もののドラマというのも何度か作られているが、テレビは苦境になればなるほど「自爆ネタ」をやらざるをえなくなっていく。シニカルなテレビ視聴者にとっては、じつはテレビはこれからが「見もの」なのかもしれない。

afterword
 小泉ジュニア演じる「都倉渉」のブログが単行本化されて百万部を突破し、「徹子の部屋」にジュニアが登場するなどというシーンもあった。ドラマ内で自局の「番宣」(番組の宣伝)もしてしまう、などというのも、視聴率がとりにくくなってきたテレビの常套戦術になっていくのかもしれない。

関連サイト
 テレビ朝日系列で放送された「コールセンターの恋人」(
http://callcenter.asahi.co.jp/)。テレビ放映は終わってしまったが、来年1月のDVD発売が決まっている。視聴率ランキングには登場しなかったが、そこそこおもしろいと思う人がいたらしい。好意的にいえば、笑わせながらほろっとさせ、ニール・サイモンなどのブロードウェイ喜劇に通じるところもあった。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.600)


 

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