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当たるも八卦、当たらぬも八卦の予想かもしれないが――総選挙議席予想
予測市場
公開日:2009/09/04 00:17
いろいろな調査から「民意」が見えてきた。
ネットでも、ネットならではの予想が行なわれている。
はたして「みんなの意見」は案外正しかったのか。
●民主党大勝のその理由
ネットでも、ネットならではの予想が行なわれている。
はたして「みんなの意見」は案外正しかったのか。
●民主党大勝のその理由
こんどの総選挙は、「民主党がほんとうにいいと思っているわけではないけれど、自民党政権にはもううんざり」という人が多いようだ。
この原稿を書いているのは総選挙の投票日より前だが、今月15、16日の両日に行われた朝日新聞の世論調査では、比例区、小選挙区とも民主党に投票する という人が40パーセント、自民党に投票する人が21パーセントとダブルスコアに近い開きだった。民主党中心の政権がいいという人も49パーセントで、自 民党中心の21パーセントを大幅に上まわった。しかし、民主党の看板政策である子ども手当を評価する人は33パーセントしかいなかった。評 価しないという人が55パーセントと過半数を占めている。高速道路の無料化も、評価しない人が67パーセント、評価する人23パーセントという具合で、民 主党の公約に対する評価は低かった。公約は評価しないが、ともかく自民党政権をだらだら続けるのはやめてほしいというのが、選挙前の民意だった。
子ども手当にしても高速道路無料化にしても評価しない人のこの多さは、直接的な受益がなく、逆に負担増がある人もいる、ということだけでは説明できない。
経済成長によって家庭の手取り所得を10年で100万円増加させるという自民党の公約についても、評価しない人が66パーセントもいた。この公約は、誰か の負担が増すわけではない。それでもこれだけ評価しない人がいたのは、自分の目先の損得だけが評価基準ではないからだろう。
自民党のこの公約の場合、最大4年しか任期のない議員を選ぶ選挙で10年も先のことを掲げることそのものを評価しない人が多いと思われる。ともかくいず れの党の公約に対しても、「お金を目の前にぶら下げれば有権者は喜ぶはず」という低級なやり方にアイソがつきているという感じがする。
「バカにするなよ」という有権者の声が聞こえるようだ。
選挙めあての公約を掲げている政治家たちよりも、有権者のほうがずっと長期的な視点に立ってものを考えているように見える。
「バラマキ政策」を続けるとどうなるかという不安感はいまや広く浸透している。この朝日新聞の調査では、「政策実現のための財源に不安を感じますか」と いう質問に対して、民主党と自民党の公約どちらについてもまったく同率の83パーセントもの人が「不安を感じる」と答えている。「財源をまかなえると思 う」と答えた人は、いずれの公約についてもわずか8パーセントしかいない。
●麻生首相が「消費税を上げる」と言い続けた理由
この調査結果を見ると、「消費税を上げることを明言するのが与党の責任」と言い続けてきた麻生首相は、とにもかくにもこうした国民感情は知って いたんだな、と思う。直感的に知っていたというよりも、消費税値上げを言っても有権者の反発がそれほど大きくはならないと独自の調査などからつかんでいた のではないか。
朝日新聞の先の調査では、「景気が回復したあとに消費税を値上げするという自民党の公約を評価しますか」という問いに、「評価しない」という人が55 パーセントで過半数を占めてはいる。しかし「評価する」という人も39パーセントいる。所得を100万円増やすという公約を評価する人は21パーセント だったから、「税金を取る」公約は「所得を増やす」公約の倍近くの人が評価したことになる。おそらく自民党支持者だけに限れば、消費税を上げる公約の支持 者はもっと多いだろう。だから、「消費税の増税を言っても、それだけでは致命的なことにはならない」というデータがあって、麻生首相が増税を主張したので はないかと思うわけだ。ただでさえ負けると思われている選挙で頑なに増税を言い続けてきたのは、そうとでもしか考えられない。
●デジタル予測は当たったか
さて、これを読んでいる人々は選挙の結果を知っているわけだが、事前に行なわれた予想は当たっただろうか。
いくつものメディアが予想を出したが、8月20日から22日にかけて発表された大手新聞の情勢調査は、民主党は安定多数どころか300議席の大台、こと によると参院が法案を否決してもひっくり返せる3分の2(320議席)を占めることもありえると報じていた。投票日が近くなるほど、ますます民主党大勝の 情勢が伝えられた。実際ははたしてどうだっただろうか。
これらはいずれも従来からある「アナログ予測」のわけだが、ネット上では、ネットならではの予測も行なわれた。
「予測市場」と呼ばれるものだ。
衆議院選挙予測市場サイトでは、登録すると、最初に10000S$もらえ(衆議院ドルと呼ぶそうだ)、それを元手に、その時点の各党の獲得議席予想が多す ぎると思えば株を売り、少なすぎると思えば株を買う。このように売買し、各党の議席予測値を上下させていく。参加者が頭をしぼって予想すれば、「みんなの 意見」は案外正しく、意外に正しい予測になっている(はず)という仕組みである。
7月21日には、民主党が242(議席)、自民党が135・7(議席)、公明党が25(議席)だった。その後、民主党も自民党も予測数を伸ばし、しばら く民主党が260前後、自民党が150台で推移していた。しかし、大手紙の先の予想が出たあと、議席差は一挙に開いた。投票日一週間前には、民主党が 290、自民党が121になり、4日前には、民主党はさらに予測値を伸ばし、310を超えた。
各党の獲得議席数以外にも、さまざまな「予測市場」ができている。投票率やその他政党の獲得議席数、自民党・民主党それぞれの総選挙までの分裂可能性、さらに選挙後の総理大臣が誰になるかの予測市場も立ち上がっている。
新首相の予測では、民主党代表の鳩山氏がほぼ一貫して95パーセントを上まわっている。「麻生首相株」はたまにまとまって買う人がいるようで、ときどき思 い出したように跳ね上がるが、ほどなく売られ、たいていは0・1〜0・2パーセントで地をはっている。7月22日には、東国原知事株に大量の買いが入り、 一時は99パーセントの鳩山株に並ぶ高騰をみせたりもした。
投票率の予測は投票日4日前に70パーセントに達した。そうとう高い。前回の衆院選の投票率は67・51パーセントで高かったが、それを上まわっている。
自民党・民主党の総選挙までの分裂可能性は、選挙が間近になった時点ではどちらも0・1パーセントしかない。しかし自民党の分裂可能性は、8月に入って からもかなり長い期間20パーセントを超えていた。もっとも、実際に分裂や政界再編が起こるとしたら、選挙後のことだろう。
サイトには予測市場参加者のランキングも掲載されている。トップの人は最初の持ち金の9倍の9万点を超えている。活発に取引している人がいるわけだ。
さて、予測市場の予想は当たっただろうか。すぐ結果がわかるというのも、こうした予測のおもしろさだろう。
追記
衆議院選の予測市場の選挙当日の数値は、民主党319、自民党119、公明党20だった。実際の結果は、民主党308、自民党119、公明党21だったので、民主党の予測値は実際より多かったが、自民党はズバリ当たり、公明党もかなり正確だった。
afterword
「予測市場」は、企業のなかでも製品の発売予測や適正価格の決定などに使われている。ヤフーやマイクロソフトなどIT企業はとりわけ積極的なよう で、グーグル内部で行なわれた予測市場については、社内の様子もうかがえる興味深い論文まで出ている。次回は、そうしたことについて。
関連サイト
●静岡大学情報学部佐藤研究室が立ち上げた衆議院選挙予測サイト(http://shuugi.in/)。これまでにも参院選や都議選の予測市場 などいくつも立ち上げている。その的中率がどれぐらいだったのか知りたいと思ったが、そうしたデータはサイトで見あたらなかった。研究の片鱗がうかがえる といいのだが。
●予測市場について詳しい山口浩氏のブログ(http://www.h-yamaguchi.net/)。各メディアの獲得議席予測が記録されている。どの予測が当たったか確かめられる。
(週刊アスキー「仮想報道」Vol.596)

